おさなごころの君に、

茜色の狂気を ものがたりに綴じて

光の庭

〇六〇 光の庭で子どもたちはやがて、 種子が芽生えるようにきゃらきゃらと遊びはじめる。 手をつないで腕を組んで、じゃれあうことが ひとつの意思疎通の方法であるかのように 互いの親密性を確かめ、誇示しあった。 きっと、あれこそが 僕という人間が持ち…

あなたが緑の黒髪と愛でるわたしの長い髪。

〇五九 わたしの褐色の肌色。 あなたの透きとおるような青白い肌色。 あなたが緑の黒髪と愛でるわたしの長い髪。 抜けやすく切れやすい、あなたの光沢のない白い髪。 わたしとあなたは、現代社会においてあからさまが過ぎるほど、 つややかであり、貧相であ…

うだるような夏の暑い日の記憶が、怒濤の文字の海からうねりをあげ押し寄せてくる。

〇五八 うだるような夏の暑い日の記憶が、 怒濤の文字の海からうねりをあげ押し寄せてくる。 ともすると一気に飲み込まれてしまいそうな既視感。 意識を失えば、僕のからだはすでにこちらへ 歩み寄りつつある男の腕に抱きとめられて、 それからそのさきは極…

君が僕を必要としてくれている、その優越感に安堵するのだ。

〇五七 つややかな黒い髪、それが無造作に流れる背中、 ときどきむせてびくつくのを、僕はどこかおそるおそる捕まえている。 君が僕を必要としてくれている、その優越感に安堵するのだ。 依存しているのは僕の方だ。 けれど、それを君に気づかれてはならない…

うすら青い幼体のからだは羽化直後の蝉のそれに似て、半透明の色白さで、脆くやわい。

〇五六 雌雄の区別もおぼつかない、うすら青い幼体のからだは 羽化直後の蝉のそれに似て、半透明の色白さで、脆くやわい。 みなうつむき気味に、時間の止まった海に留め置かれている。 魂の宿った片鱗は見当たらない。 半永久的に保存するには、生身の命はあ…

光と影、白と黒、モノクロの世界、それが僕の最初の記憶だった。

〇五五 そこに横たわる僕自身、繋がる無数の管と電極、 光と影、白と黒、モノクロの世界、 それが僕の最初の記憶だった。 ガラス窓の向こうを、頭まですっぽり白で 覆い隠した人々が日に何度か通り過ぎるのを、 彼らが自分とおなじものであると認識したのは…

叶わないなら跡形なく消えてくれ

まるで根拠のない淡い期待がある それを信じたくないじぶんと 期待に期待しているじぶんがいる わたしの根拠のない勘は兎角 不確かだけれども存外よくあたる しかし期待するなと謳うのも 確かにわたしのなかのわたし自身 叶わないなら跡形なく消えてくれ 【k…

怯えているのはポーズだろう

雑多な感情は僕のなかで 腐敗と発酵をくりかえす 目に見える感情は 触れればあたたかく ときに指先を濡らす 怯えているのはポーズだろう 君という自意識はそこにはない 【kindle ことことこっとん】 お題「夏休みの思い出」 斜陽・人間失格・桜桃・走れメロ…

有孔虫が見た夢を君にも見せてあげる

有孔虫が見た夢を 君にも見せてあげる 【kindle ことことこっとん】 お題「思い出の一枚」 ユメのなかノわたしのユメ アーティスト: 伊藤真澄 出版社/メーカー: ランティス 発売日: 2012/08/08 メディア: CD 購入: 2人 クリック: 10回 この商品を含むブログ …

じわりとめり込む感覚があって、それから熱い波が押しよせてくる。

〇五四 じわりとめり込む感覚があって、 それから熱い波が押しよせてくる。 君の血、君の体温、あわせた手のひらの 根元から手首の血管が同化をはじめる。 植物の種が芽をだし成長してゆく様子を 早回しで流しているような、しかし 支柱を求めさまよう蔓は生…

鉱物化していたあなたのからだの弾力を確かめる

〇五三 隣で眠るあなたをさがしてシーツをたぐりよせ、 ついいましがたまで見ていた夢では完全に 鉱物化していたあなたのからだの弾力を確かめる。 枕にうずもれた頬の赤み、しずかに浮き沈みする胸元、 すり寄せた耳元へと吹きかけられるしめった呼気。 わ…

少しも可愛くないあたし

嫌われたくて 嫌いなあたしを 指差して 少しも可愛くないあたし 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「わたしのモチベーションを上げるもの」 ハウス シャービックイチゴ 87g×5個 出版社/メーカー: ハウス食品 メディア: 食品&飲料 この商品を含むブログ…

概念になりたかった

ものがたりに逃げてしまいたい 逃げてしまいたいのに、 あたしはあたしをとりまく 大気にすら埋められそうで 頸動脈をおさえて意識を遠のかせても 肉体の重みは変わらない 概念になりたかった 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「星に願いを」 [まとめ…

薔薇の花

愛されたいとか 求められたいとか そんな ありきたりな承認欲求は皆無で たぶんもう そうそう 満たされることはないのだろう 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「星に願いを」 愛するということ 新訳版 作者: エーリッヒ・フロム,Erich Fromm,鈴木晶 …

#蛙化現象

さよならバイバイ おやすみじゃあね 僕のこと好きだなんて言わないで 君のこといらなくなる わからなくなる だから離れて、二度と思いださないで 【kindle ことことこっとん】 お題「恋バナ」 恋の心に黒い羽 (MARBLE COMICS) 作者: ヤマシタトモコ 出版社/…

#葬式に呼んでください

君に無垢の晴れ着なんて似合わない だから死ぬまで待ってくれるか 【kindle ことことこっとん】 お題「プロポーズ」 もらい泣き (集英社文庫) 作者: 冲方丁 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2015/08/20 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る …

眠り姫モード

これはもう、本格的に眠り姫モード突入おやすみなさい 【kindle ことことこっとん】 お題「マイブーム」 おどる12人のおひめさま―グリム童話 作者: ヤーコプ・ルートヴィッヒ・グリム,ヴィルヘルム・カール・グリム,エロール・ル・カイン 出版社/メーカー: …

乳白色の竜のひな

睡眠に依る罪悪は ひとたび眠り 目覚めてなほ、眠りの淵 この身あずくる夢のきは 乳白色の竜のひな孵る奇跡と 似て非なる、相似性をもつて おまへを呼ばふ 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「雨の日の過ごし方」 雨の日はファンタージエンへ行ける気…

異世界のとびらをひらく鍵

おまもり代わりの金の指輪は 願いごとを叶えてくれるわけでも 異世界のとびらをひらく鍵でもない それでもわたしは何かを期待して 明けても暮れても身につける 【kindle ことことこっとん】 お題「愛用しているもの」 「ナルニア国ものがたり」全7冊セット …

僕の知らないところで みんなみんな しあわせになってください

僕の知らないところでみんなみんなしあわせになってください 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「お部屋自慢」 作画資料写真集 女子部屋 作者: 川本史織 出版社/メーカー: 玄光社 発売日: 2016/07/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 堕…

しっとりしとしとしらんぷり

しっとりしとしとしらんぷり 滴るしりとりしたり顔 しなやかしめやか舌足らず しんしんしるしるしるぶぷれ 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「お部屋自慢」 ムーン・パレス (新潮文庫) 作者: ポール・オースター,Paul Auster,柴田元幸 出版社/メーカ…

三十一文字は長すぎて 十七音のデッサンを仮縫いする日々

三十一文字は長すぎて 十七音のデッサンを仮縫いする日々 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「お部屋自慢」 作画資料写真集 女子部屋 作者: 川本史織 出版社/メーカー: 玄光社 発売日: 2016/07/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 堕落部…

誘蛾灯

人に生まれ人に育って人のまま蛹になって孵化しない繭のままいつか誘蛾灯に焼かれる夢をみている 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「お部屋自慢」 Casa BRUTUS(カ-サブル-タス) 2018年3月号 [照明上手] 出版社/メーカー: マガジンハウス 発売日: 2018…

熱い指先

熱い指先 雨に濡れてる熱い指先赤いくちびる薄いくちびるやわい甘い白い甘噛み揺れるまわる廻るむらさき滲む澱むにじむよどむ屑屑屑舌先に物乞い 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「お部屋自慢」 BRUTUS(ブルータス) 2018年5/15号No.869[居住空間学20…

✿雛飾るたなごころからたなごころ 楢﨑古都

【商家に伝わるひな人形めぐり俳句大賞】*1 ✿佳作・入選 雛飾るたなごころからたなごころ 楢﨑古都 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「あの人へラブレター」 I Love Youの訳し方 作者: 望月竜馬,Juliet Smyth 出版社/メーカー: 雷鳥社 発売日: 2016/1…

浮かれ猫ひとりの朝の空はきれい

細雪出逢えば愛を知ってしまう 蒼穹に風花として君よゐて 彼れ(あれ)と君、六花も解かす方程式 ◎ 浮かれ猫ひとりの朝の空はきれい 羽風さへ僕らを分かつふいの蝶 春泥にはしゃぐ禿のまばゆさよ 【kindle ことことこっとん】 今週のお題「自己紹介」 寺山修…

 「かなしみの羊水」 楢崎櫻子

■Instagram #淡水魚化石 まるで、かなしみの羊水に溺れてしまったみたいだ。 ぬるい水にあおむけの体で浮き沈みしながら、依子はおもった。 たまに口元へかぶるプールの水はなめらかで、カルキ臭もやわらかい。たゆたっていると、コースを泳いでいくひとの水…

残酷で当然じゃないか、僕らは子どもだったんだから。

〇五二 彼もまた環世界を構成する一部に過ぎなかった。 大人たちに、社会に、いいようにされたなんて これっぽっちも思っちゃいない。 いつか僕はしぬだろう、そして、彼は目覚めるだろう。 残酷で当然じゃないか、僕らは子どもだったんだから。 おとぎ話の…

淘汰されることを、恨みがましくも思えないんだ。

〇五一 覚えていて欲しいんだ。 ほかに、手立てがないってのもあるけど。 僕が笑っているのがおかしいって? そうだなあ、僕自身のことも、記録として 留めおきたいって気持ちが少なからずあるからかな。 それってしょうもないだろ。 淘汰されることを、恨み…

ふるえるよ、ぞくぞくするね。

〇五〇 君のこと、もう傷つけることもできないのかって、 いまさら気がついて、いまさら僕は傷ついた。 傷ついて、改めて君を傷つけることに決めた。 君は、その生体機能をありとあらゆる人工知能によって、 機械化という無機物的行為によって、すべてを 完…