おさなごころの君に、

茜色の狂気を ものがたりに綴じて_

真夏の夜など君はもう図書室で寝落ちてしまって

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〇二一

真夏の夜など君はもう図書室で寝落ちてしまって、

僕は僕で君がいなけりゃ万が一発作でも起こしたら

敵わないから、すぐそばに寄り添い眠った。

図書室は誰からもその必要性を見失われていたけれど、

人類種の軌跡、連なってきた過去の貴重な遺物たちが

納められていることに変わりなかった。

だからこそ学院はこの場所を保存し続けてきた。

そして、こんな勝手が許されていた僕らもまた、

社会にとって稀少な検体であったのだといまならわかるのだ。 

 

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過去の遺物保管所と化している図書室にとじこもった

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〇二〇

君は夏の暑い日がとても苦手だった。

まるで北極熊が冬ごもりのため穴を掘り、

そこで出産・子育てするように、

湿度・温度が完全管理された、いまとなってはもはや

過去の遺物保管所と化している図書室にとじこもった。

僕らの生態はすでに遺伝子レベルで

ありとあらゆる知識を記憶するに至っており、

紙の本など無為なもとのみなされていた。

 

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今週のお題「体調管理」

北極ライフ

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愛しているということばの持つ哀しみにも気づかずにいられた

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〇一九

夢の中の僕は君のことがずっと好きで、これまでもこれからも

ずっと君と生きていくことができるのだった。

目覚めるとき、今朝こそは痺れる冷たさだけを残したシーツに

触れるのではないかという不安を抱えながら、

毎晩僕らは眠りにつく。

隣で眠ることを許された特権と引き換えに突きつけられた恐怖。

そんないつかを僕も君もそこでは何も知らず、穏やかに眠り、

愛しているということばの持つ哀しみにも気づかずにいられた。

 

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お題「起きて最初にすること」

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やわらかな、とてもやわらかな夢を見た

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〇一八

やわらかな、とてもやわらかな夢を見た。

そこはとてもあたたかく、

僕は生きる糧としての宿り木を必要としなかった。

むしろ、そんなことはすっかり忘れて、

僕は世界と同化していた。すべてのものがやさしく、

僕はただ僕であればよく、君は君であればよかった。

そう、君。そこには君もいた。

君もまた憂いを帯びた瞳の色を知らず、

ただ穏やかに僕とともにそこにいた。

 

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お題「もう一度行きたい場所」

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