2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧
〇六〇 光の庭で子どもたちはやがて、 種子が芽生えるようにきゃらきゃらと遊びはじめる。 手をつないで腕を組んで、じゃれあうことが ひとつの意思疎通の方法であるかのように 互いの親密性を確かめ、誇示しあった。 きっと、あれこそが 僕という人間が持ち…
〇五九 わたしの褐色の肌色。 あなたの透きとおるような青白い肌色。 あなたが緑の黒髪と愛でるわたしの長い髪。 抜けやすく切れやすい、あなたの光沢のない白い髪。 わたしとあなたは、現代社会においてあからさまが過ぎるほど、 つややかであり、貧相であ…
〇五八 うだるような夏の暑い日の記憶が、 怒濤の文字の海からうねりをあげ押し寄せてくる。 ともすると一気に飲み込まれてしまいそうな既視感。 意識を失えば、僕のからだはすでにこちらへ 歩み寄りつつある男の腕に抱きとめられて、 それからそのさきは極…
〇五七 つややかな黒い髪、それが無造作に流れる背中、 ときどきむせてびくつくのを、僕はどこかおそるおそる捕まえている。 君が僕を必要としてくれている、その優越感に安堵するのだ。 依存しているのは僕の方だ。 けれど、それを君に気づかれてはならない…