おさなごころの君に、

茜色の狂気に、ものがたりを綴じて

2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

額にはりついた、遅れ毛の一本一本まで鮮明だ。

教室。始業前の、まだだれもいない教室。わたしは瑠璃子をさがしている。夢だとわかる。学年の違う彼女が、ここにいるはずがないのを知っているからだ。自分はいま、自分の夢を俯瞰している思考だ。 ぐるりと見渡し、まだ低いが強く差し込む陽を遮るために、…

コップの底を薄く濡らす程度の存在価値しか見出せない

茜ちゃんはいちいち律儀だ。 むかし好きだった男のことまで、いつまでも気にかけている。初恋とはそうも貴重なものだったかしらと考える。たとえば、ロングスカートの裾が歩くたび足にまとわりついてくる感じに似ている。使い古されてチープな匂いのする、未…