おさなごころの君に、

茜色の狂気に、ものがたりを綴じて

あんなの傷の舐め合いだ、涙なんてひどく苦い味がするんだから。

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〇三五

ねえ、どうして僕らは泣くことができなかったんだろう。

行為としてのそれは知っているのに、

僕も君も涙というやつを流せなかった。

あれを、普通種の劣性として馬鹿にする奴らもいた。

でも僕ら人類種にとって、泣くことは

当たり前の行為だったんじゃないだろうか。

単純に、できないことができるっていうのは

うらやましいし。

だからあの言いがかりも、君にしてはめずらしい

見栄っ張りだったんじゃないかって僕は思う。

「あんなの傷の舐め合いだ、

涙なんてひどく苦い味がするんだから」

 

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お題「思い出の味」

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蒼穹のファフナー*3 、『攻殻機動隊*4 の脚本と、

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実話をもとに創作されたショートショート集、

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